日本では、少子高齢化が現在進行形で進んでいます。社会で働き手となれる「生産人口」が急速に減少し、小売り、飲食、物流、建設業では人手不足が顕著で求人募集しても応募さえこない状態が慢性化しており、跡継ぎがいない、アルバイトに入れるスタッフがいないことなどが原因で、「人手不足倒産」する企業さえ出てきています。
投資余力があったり、将来を見すえた企業は、できるだけ人手に頼らず、多くの業務を自動化するべく、設備投資に多額の資金を投入しています。たとえば、ヤマト運輸株式会社は、総事業費2,000億円を投入し、2013年に羽田空港に隣接する日本最大級の物流拠点を構築しました。
この物流拠点では、トラックから降ろされた荷物をベルトコンベアーに乗せ、ライン上で自動的に仕分けする仕組みを作りました。これによって、現場の作業員数を全体で約3割、仕分けラインだけで見ると7割の作業員の削減が実現しました。
同様に、世界的なインターネット企業は、軒並みIT分野の投資の力をいれ、急速な勢いで事業規模を拡大しています。
インターネット検索・広告の世界最大手Googleや、SNS世界最大手Facebook、インターネット小売世界最大手Amazonを見ても、ユーザーに提供するサービスのほとんどがすべてインターネットで完結し、世界中で多額の売上、利益をあげています。
Googleの2016年の通期の売上高は902億7,200万ドル(約10兆3,000億円)、Facebookの2016年の通期の売上高は276億3,800万ドル(約3兆円)、Amazonの2016年の通期の売上高は1,359億8,700万ドル(約15兆円)です。
インターネットで行われる事業では、特にシステムの完成度や安定性、規模がそのまま企業の競争力になる時代です。Facebookは自社の開発方針や開発の現状を広くインターネットで公表しています。Facebookサイトでは、機能のリリースや修正はかなり頻繁で、全てのコミット(修正や機能リリース)が1回で本番環境に配置されるわけではなく、たくさんのコミットがまとめて数時間ごとに反映されるようになっています。
参考サイト: Continuous Deployment of Mobile Software at Facebook (Showcase)
高度なシステムを稼働させ大きな売上や利益を上げられる一方で、GoogleもFacebookもAmazonも、どれほど大きなサイトであれ、サイトの稼働が止まると売上や会社の業務にに甚大な影響を及ぼします。サイトの稼働が止まる要因は様々で、プログラムミス、天災、ネットワーク障害、ハッカーによる攻撃など、いつ襲ってくるかわかりません。
特にハッカーからの攻撃は、それらの企業の知名度やサービスの注目度を考えると、攻撃頻度も攻撃内容もかなりシビアであることが予想されます。日本の中小、零細企業のWEBサーバであれ、記録されたログを見ると、四六時中攻撃にさらされていることがわかります。日本でも世界でも、企業やサービスとして名前が知れ渡れば知れ渡るほど、ハッカーからの攻撃対象になりやすいため、最新鋭のセキュリティシステムの導入や、24時間365日の監視体制が必要になることは容易に想像されます。この他、事業規模が大きくなればなるほど、データのバックアップ体制や、ディザスタリカバリ(天災などの障害から復帰する仕組み)体制、ネットワークのやシステムの冗長化(ひとつのシステムや通信経路が稼働停止になっても、予備のシステムや通信経路が稼働し、同様の役割を果たすようにすること)も大規模になっていきます。
多額の売上や利益を上げている企業であれば、これらのシステム周りの投資にお金を回すことができますが、それほど売上や利益が多くない企業や、中小、零細企業ではこれらの投資が大きな負担になっています。