ランサムウェアの最盛期に製造業が順守すべきサイバーセキュリティのベストプラクティスとは

世界中のサイバー犯罪グループが製造業に目を向けています。メーカーはサイバーセキュリティを迅速に強化して、次なるランサムウェアの被害者となるのを避けなければなりません。サイバーセキュリティを実行する手順について説明します。

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今日、製造業は従来のやり方と新しい時代の間のボーダーラインに立たされています。設備施設はインターネット接続へと移行していますが、サイバーセキュリティとなると遅れがちで、業界を大きなリスクにさらしています。メーカーでは、運用機器・機械・組立ラインにおいて、ワイヤレスネットワークに接続されたインターネット対応センサーが装備されています。これらのセンサーから大量のデータが生成されるため、メーカーは機器をリアルタイムで監視し、プロセスを改善し、生産性を高め、効率を高めることができます。反面、サイバーセキュリティについては往々にして後回しにされているかもしれません。

設備施設でインターネットに接続された機器やプロセスの使用が増えると、攻撃対象領域が拡大してエントリポイントが増えることになります。サイバー犯罪者はこのエントリポイントから組織に侵入してランサムウェアをネットワーク全体に拡散していくのです。これをわかっていて、サイバー犯罪グループは製造業を標的にしています。影響力のある業界が閉鎖すると影響は広範囲に及び、業務再開をするための支出も膨れ上がってしまいます。ランサムウェア攻撃から生じたであろう悲惨な例としては、米国の牛肉供給のほぼ4分の1を占める加工工場を閉鎖したJBS食品製造への攻撃があります。

接続されたデバイスとデジタルプロセスが増加すると、サイバーセキュリティのリスクも高まります。サイバーセキュリティのベストプラクティスを選択したり、増大するランサムウェアの脅威から身を守ったり、さらにはファンダメンタルズを採用したりすることに関して、メーカーの多くは遅れをとっています。その例として、コロニアル・パイプラインへのサイバー攻撃では、ユーザーアカウントに基本的な多要素認証(MFA)を要求できず、ハッカーが組織のネットワークに侵入するのを許してしまいました。

世界中のサイバー犯罪グループが製造業に目を向けています。メーカーはサイバーセキュリティを迅速に強化して、次なるランサムウェアの被害者となるのを避けなければなりません。サイバーセキュリティを実行する手順としては次のステップが考えられます。

1. 包括的な監査を実施する

そこにあると知らないものを保護することはできません。実行されている全デバイス、アプリケーション、そしてレガシーシステムを含む環境の全貌を、組織は把握できているでしょうか。まず、環境全体の包括的な監査を実施して、デバイス、アプリケーション、そしてシステムを特定しましょう。さらに、それらがどのように構造化され接続されているかを把握します。システムはセグメント化されていますか?マシンが感染した場合、製造装置や他の運用技術に危険は及びませんか?すでにアップデートせずパッチを受け取らなくなったレガシーシステムはありませんか?保護されていないシステムへのリモートアクセスはありますか?変更すべき非アクティブなユーザーアカウントまたは権限はありますか?環境全体を可視化することで、どのような保護を実施したらよいか適切な判断を下すことができます。

2. サードパーティのパートナーを調べる

自社の環境だけでなく、サプライチェーンパートナーとその挙動にも目を向けてください。サードパーティパートナーへの自動接続を確認しサイバーセキュリティポリシーについて問い合わせます。例として、米国におけるSolarWinds攻撃では、信頼できるサプライチェーンパートナーとその顧客ベースに拡散してしまい、18,000以上の組織に影響を及ぼしました。

3. クラウドを検討する

製造業においては、クラウドは他の業界ほど普及していませんが、組織のどこかでクラウドサービスを利用している場合は、適切に管理されていることを確認しましょう。クラウド上の会社のデータは、ユーザーの動作を制御していますか?オンプレミスシステムと同じ基準でクラウドを保護していますか?バックアップが悪意をもって削除されてしまうことから保護されていますか?

4. ロードマップの作成

組織の環境、パートナーの環境、そしてクラウドについて完全に把握できたら、ロードマップを作成します。特定したギャップ、脆弱性、および潜在リスクを視野に入れて、実行するアクションを緻密に計画し所有権を割り当てます。適切なリソースがあることを確認し、進捗状況を追跡して結果を測定します。NISTサイバーセキュリティフレームワークサイバーセキュリティ成熟度モデル認定などの業界フレームワークを活用することで、順守すべきセキュリティ成熟度フレームワークが明確になります。後者は防衛産業向けに開発されたものですが、どのセクターにも適用できます。

5.経営層とのコミュニケーション

組織のサイバーセキュリティプログラムで最も重要な要素はおそらく、経営層とのコミュニケーションであるかもしれません。製造業においては、直面するリスクを組織のリーダーが把握できていない場合があります。つまり、今日のサイバーセキュリティの脅威への準備ができていないだけだとも言えるでしょう。サイバーセキュリティの専門家は、リスクのレベル、攻撃が組織や顧客そして財務にどのように影響するかという点について、効果的に説明することが重要です。このことは、経営層のサポートのもと、サイバーセキュリティの実践を強化できるリソースを得るためには重要です。

6.維持

一旦サイバーセキュリティの基礎が整ったら、次は制御のレベルを長期にわたってどのように維持すべきかを検討します。組織は、24時間年中無休でのカバレッジを維持するためのリソースを社内に持っていない場合があります。ここで役に立つのはマネージドセキュリティサービスプロバイダー(MSSP)のような信頼できるパートナーに頼ることです。専任のハイスキルなセキュリティチームが味方となって、24時間体制でのカバレッジや、脅威への迅速な対応を維持することができます。MSSPは、必要に応じて環境を監査するための事前作業、およびロードマップのマッピングや実装を支援します。そうして目標をより早く達成できるようにすることもできるのです。

メーカーがサイバーセキュリティを近代化するために要する時間と労力を考えると、それは大変なことのように思えるかもしれません。しかし怠慢にしていると一層コストがかかります。単一のランサムウェア攻撃を受けると、シャットダウンされた操作のコストに始まり、身代金の支払い、そして組織に与えられた評判の損害に至るまで、何億円もの損害を引き起こすことがあるのです。適切な計画を練ることで、メーカーはサイバーセキュリティの姿勢を強化することができるのです。

シングテルでは、世界クラスのサイバーセキュリティでお客様のビジネスを守ることが可能です。シングテルのサイバーセキュリティ部門であるTrustwave(トラストウェーブ)社アナリストとエンジニアが最先端のサイバーセキュリティを専門的に支援します。

※ 当記事は、Trustwave(トラストウェーブ)社のブログからの転載です。

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