持続可能性を実現する柔軟なネットワーク

データトラフィック量が急増している中で、持続可能性を実践しながら適切に対処することは、企業にとって大きな課題です。ソフトウェア定義ネットワーク(ソフトウェア・デファインド・ネットワーキング、SDN)ソリューションは、コンピューターネットワークにおける二酸化炭素排出量を効果的に低減するうえで、重要な役割を果たします。

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コンピューターネットワークにおける二酸化炭素排出量の削減

多くの組織では、ネットワークインフラの運用や冷却に膨大なエネルギーを浪費し、大量の二酸化炭素廃棄物を排出しています。

国際エネルギー機関のレポートによれば、2020年の全世界でのデータ伝送ネットワークで260〜340TWhが消費されています。これは、全世界の電力使用量の約1.1〜1.4%を占めます。そして、ブロックチェーン、機械学習、5G、バーチャルリアリティなどの新たなデジタルテクノロジー分野でのデータサービスの需要の高まりと共に、さらに電力使用量は増加します。

デジタルネットワークで急増する二酸化炭素排出量を抑えるには、ハードウェアの急増を利用効率の向上を図ることで抑制する必要があります。

企業には、今後の需要増加に対応し、常に最適なパフォーマンスを確保するため、ネットワークやデータセンターなどのICTインフラに過剰な容量を組み込むといった傾向が見られます。一般に、コンピューターネットワークの固定エネルギーコストは高いため、インフラ構築によりネットワーク全体のエネルギー使用量が増加します。

また、ネットワークの二酸化炭素排出量を削減する別の方法として、例えばエネルギー効率の高い冷却システムを備えたインフラなど、より環境に配慮したインフラへと、データトラフィックチャネルを整備することが挙げられます。ただし、従来のネットワークでは、コントロールプレーンとデータプレーンが密接に結び付いているため、この方法は現実的ではありません。また、変更に適応するには、ネットワークコンポーネントをすべて再構成する必要があります。さらに、エネルギー効率の高い経路を通過するトラフィックのルーティングには、従来のネットワーク運用方法に新たなレベルの柔軟性を加えなくてはなりません。

ソフトウェア定義ネットワーク(ソフトウェア・デファインド・ネットワーキング、SDN)ソリューションは、こうした問題の解決への鍵となります。

SDNは本来、省エネや二酸化炭素排出量の削減を目的に設計されたわけではありませんが、この技術を利用して、ネットワークインフラを最適化し、スイッチング電力消費量を削減して、持続可能なネットワークへの移行を促進できる可能性を秘めています。

SDNは比較的新しいネットワークパラダイムであり、制御・転送の両機能の密接な繋がりを解除することができます。従来のネットワーク設計では、両機能ともスイッチ内に存在していましたが、SDNでは、コントロールプレーンとデータプレーンは切り離されています。前のセグメントとマージコントロールプレーンは中央コントローラ内、データプレーンはスイッチ内と、両者は別々に存在しています。

このアプローチにより、企業には、ネットワーク全体を俯瞰し、インフラを一元的に制御・監視するための道が開かれます。また、コントローラーで変更を実行し、変更内容をネットワーク全体に反映することができるため、ネットワークのプログラミングも可能になります。

SDN自体には、エネルギー効率を高めるために、トラフィックやエンドシステムを考慮したモデルなど、ソフトウェアベースのアプローチがあります2

トラフィックを考慮したコントローラーを使用すると、トラフィック負荷が低いときには一部の転送スイッチをオフにしたり、CPUやポートをスリープモードにしたりすることで、エネルギー消費量の削減を図ることができます。AssefaとÖzkasapの調査によれば、夜間時などトラフィック負荷が低いときは、総エネルギー消費量の最大50%もの節約が可能になります。

一方、エンドシステムを考慮したアプローチでは、仮想マシンを少数の物理マシンに移行したり、運用頻度の低いサーバーをオフにしたりして、運用中の物理マシンの数を最小限に抑えることを目標としています。

仮想マシンを接続するために、SDN対応のスイッチとリンクのオーバーレイが形成されます。これによりサーバーの統合が実現し、なるべく多くの仮想マシンを少数の物理マシンに移行できるので、物理マシンの運用数を最小限に抑えられます。オーバーレイにより、仮想マシンを物理マシン間で移行するための転送コストが最小限に抑えられるため、ネットワークの最適化も実現します。

二酸化炭素排出量削減の観点での直接的な利点は、ネットワーク管理者がネットワークのワークロードを最小限のデバイスに統合し、ハードウェアの利用効率の最大化を図ることができるということです。使用していないスイッチをオフまたはスタンバイモードにして、消費電力や冷却費用を削減することもできます。

またSDNでは、ピーク時の容量要件を満たすためや、万が一の場合に備えて、企業がインフラを過剰に整備する必要も一切ありません。代わりに、ネットワーク内のすべてのスイッチをタップしてトラフィックフローを処理することで、ネットワークを迅速に拡張できます。例えば、トラフィックの負荷やポートを共有したり、リンクアグリゲーションタスクを利用可能なスイッチングファブリック全体に分散させたりすることが可能です。

また、SDNのプログラミングも可能なため、ネットワーク動作を動的に変更することで、さまざまな使用要件に対応できます。例えば、スイッチングファブリックの設定により、日中はトランザクション指向の業務を優先させ、夜間は大容量のメディアストリーミングアプリケーションを処理させることもできます。これにより、複数のネットワークのセットアップの設定、電力供給、冷却を行う必要がなくなるため、二酸化炭素排出量の大幅削減への一歩となります。

SDNは、環境に優しいネットワーク技術を適用するための重要なカギとして、二酸化炭素排出量の削減にも貢献しています。この技術により、ネットワーク管理者は、ネットワーク使用とそれに伴う電力消費の需要を、最もエネルギー効率の高い部品や、最も環境に優しいインフラへと、容易に分散できます。

従来のネットワークでは、変更内容が反映されるまでに数時間もかかることがありますが、ソフトウェア定義ネットワークパラダイムでは、デバイスセット間でのネットワークスイッチ構成の転送もほぼ瞬時に実行できます。また転送時にシステムがダウンすることも一切ありません。

通信パスは、現在の二酸化炭素排出量に基づいて動的に選択することができます。これにより、ネットワーク全体を、最も環境に優しいソリューションを提供する設備に動的に移行できるようになり、採算も取りやすくなります。

データトラフィック量が急増している中で、持続可能性の緊急課題を実践しながら適切に対処することは、企業にとって大きな課題です。ソフトウェア定義ネットワーク( ソフトウェア・デファインド・ネットワーキング、SDN)ソリューションは、さまざまなグリーンテクノロジーと同様、コンピューターネットワークにおける二酸化炭素排出量を効果的に低減するうえで、重要な役割を果たします。

ソフトウェアを使用してエネルギー効率化を図るこのアプローチにより、インフラをプログラミングすることで、ハードウェアの利用効率や統合を改善し、環境に配慮したソリューションを取り入れやすくなり、二酸化炭素排出量の削減にも繋がります。

今、二酸化炭素排出量の削減が求められています。詳細については、当社までお問い合わせください。

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