中国で VPN を使うには?業務用アプリや基幹システムの利用に最適な法人向けサービスを解説

中国に進出する企業にとって、クラウドサービスや業務アプリへの安定したアクセスは欠かせません。しかし、中国本土には、Microsoft 365 や Google Workspace をはじめとする主要サービスへのアクセスが困難になることもあります。 特に VPN の利用には法的な規制や技術的な制約が多く、無料 VPN や個人向けサービスでは業務に支障をきたすケースも少なくありません。本記事では、こうした中国特有のネットワーク事情をふまえ、法人向けに最適な VPN の選び方や導入時の注意点についてわかりやすく解説します。

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中国で VPN を使うには?業務用アプリや基幹システムの利用に最適な法人向けサービスを解説

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中国で VPN が不安定になる理由

まずは、中国において VPN 環境の接続が不安定になる理由と、アクセスが困難になる可能性のある主なクラウド・基幹システムについて解説します。
中国政府は、国内のインターネットを統制するために「グレートファイアウォール」を設けているといわれています。そのため、安定的なインターネット接続や外部サービスの利用が難しい状況が生じているのです。さらに、通信対象も一定ではなく変動するため、企業にとっては予測困難になっています。

中国でアクセスが困難になる可能性のある主なクラウド・基幹システム

中国では一般的に業務で利用される主要なクラウドサービスやビジネス向けのアプリケーションの多くが、VPN を利用しなければ、正常にアクセスすることが困難になる場合があります。
中国でアクセスが困難になる可能性のある代表的なサービスをまとめると以下の通りです。

分類 サービス名
ビジネス系 SaaS




・Microsoft 365
・Google Workspace
・Dropbox
・Salesforce
・Zoom など
SNS



・LINE
・Facebook
・Instagram
・YouTube など

中国で無料 VPN や個人向け VPN が繋がらない理由

中国では、多くの VPN サービスのアクセスが困難になる状況にあり、特に無料 VPN や個人向け VPN は高い確率で接続が難しくなります。これらのサービスは業務利用を前提としていないことから、安定性や安全性の面で多くの課題を抱えているためです。
具体的には、公式なサーバー IP が使われていないことが多く、暗号化レベルが低いために通信の脆弱性が問題になることも理由の一つです。さらに、通信帯域の不足や同時接続数の制限などによって安定した接続が維持できないケースもあり、業務利用には適していません。

中国での VPN 利用における法規制と注意点

中国では VPN に関する明確な法規制が設けられており、未認可の VPN サービスを使用することは違法と見なされる可能性があります。特に企業においては、通信の安定性や利便性を求めるあまり、知らずに規制対象となる VPN を利用してしまうと、業務停止や罰則といった深刻なリスクを招きかねません。

ここでは、企業が VPN を導入・運用するうえで注意すべき法的なポイントと、違反時に生じうるリスクについて整理します。

企業が守るべき VPN 規制のポイント

中国では、通信統制の一環として VPN の利用に対する明確な法規制が存在します。基本的に認可を受けた通信事業者が提供する VPN サービスのみが合法とされており、それ以外の未認可 VPN を業務利用することは違法と見なされるおそれがあります。特に法人利用においては、接続方法や構成の透明性が求められるため、慎重な対応が必要です。
外資系企業が VPN を利用する場合も、特定の条件を満たす法人向け構成である必要があります。たとえば、中国国内の通信事業者を経由した VPN の利用や、政府が定める範囲内での接続制限の順守が求められます。
加えて、中国当局は企業ネットワークに対する通信監視体制を敷いており、その基準に則った運用をしていなければ指導や調査の対象となることもあります。

中国での違法 VPN 利用のリスクと注意点

企業が未認可の VPN を使用していた場合、単に接続が困難になるだけでなく、法令違反として罰金や摘発の対象になる可能性があります。特に法人利用においては、個人とは異なり企業としての法的責任が問われるため、リスクはより深刻です。
VPN の利用契約を結ぶ際には、提供事業者が中国の規制に準拠しているか、構成が合法かどうかを事前に確認することが不可欠です。また、法務部門や現地スタッフとの連携を通じて、リスク回避の方針を明確にしておく必要があります。

企業でよくある VPN トラブルとその影響

中国での VPN 利用は、法規制をクリアしていても、実際の運用面でさまざまなトラブルに直面することがあります。ここでは、企業でよく見られる VPN に関するトラブルの具体例と、それが業務や組織に与える影響について整理します。

接続の遅延・切断による業務への影響

VPN の接続が不安定になることで、日常業務にさまざまな支障をきたすことがあります。特にクラウド上の資料やファイルへのアクセスに失敗したり、通信速度が低下しビデオ会議中に音声や映像が乱れたりするケースは少なくありません。業務レポートや承認作業が遅れることで、チーム内の進行にも影響が出ます。
さらに、基幹業務システムへの接続が確立できない場合には、受発注業務などミッションクリティカルなプロセスそのものが滞り、ビジネスの継続に直結するリスクも伴います。

クラウドサービス利用時の接続障害

中国では、VPN を経由することでクラウドサービスへのアクセスが困難になる事例が多く報告されています。たとえば、Salesforce や Google Drive など、日常業務で利用されるツールの使用が困難な状況に陥ると、社内の情報共有が滞り、現地と本社間の連携にも支障が出ます。VPN 接続による安定性の問題が原因で、せっかく導入したクラウドツールを活用できず、結果的にクラウド導入そのものを見送る企業も存在します。

IT 部門が抱える運用・サポートの負担

VPN に関連するトラブルが発生すると、IT 部門にはその都度、接続確認や障害対応の負担が増えます。特に障害発生時の原因特定や復旧作業には時間がかかることが多く、通常業務に割くリソースが圧迫されることも多いです。
さらに、各拠点や従業員からの問い合わせが増え、社内全体のストレスや不満の要因になることもあります。こうした対応の積み重ねが、IT 部門の慢性的な疲弊につながるケースも見られます。

法人向け VPN 導入前に確認すべき 6 つのポイント

中国での VPN 利用には技術面・法規制の両面で多くの注意点があるため、導入時には慎重な事前検討が不可欠です。ここでは、中国で法人向け VPN を導入する際に確認すべき 6 つの観点について、具体的に解説します。

技術要件

法人向け VPN を導入する際は、まず技術的な要件を確認することが重要です。通信の安定性や安全性はもちろん、拠点やユーザー数に応じた柔軟な構成が可能かどうかも検討のポイントになります。
たとえば、通信プロトコルとしては SSL-VPN や IPsec が推奨されます。また、専用線や帯域保証の有無、レイテンシ(通信遅延)の目安も評価対象です。さらに、フェイルオーバー対応などの冗長構成や、スループット・同時接続数・対応拠点数といった性能面も、事前にスペックを把握しておく必要があります。

中国での VPN 利用に必要な条件

中国で VPN を合法的かつ安定的に利用するには、現地の法制度や技術要件に適合した構成であることが前提です。基本的に、中国政府の認可を受けた通信事業者経由で構成された VPN のみが許可されており、未認可 VPN の使用は罰金や業務停止といった企業リスクを招く恐れがあります。
導入にあたっては、VPN 事業者が中国の制度に準拠しているかどうか、提供形態が合法かどうかを契約前に確認しましょう。また、社内の情報システム部門や現地法務部門と連携し、社内ポリシーとの整合性も事前に確認しておくことが重要です。

現地ネットワーク環境とクラウド連携の確認

VPN の最適な構成や安定性は、導入する製品そのものだけでなく、現地のネットワーク環境に大きく左右されます。たとえば、拠点ごとのルーター設定や NAT 環境、使用する ISP (回線事業者)との相性によって、VPN の通信品質が変動する可能性があります。
また、Microsoft 365 や Google Workspace など、接続対象となるクラウドサービスの要件との互換性もチェックが必要です。さらに、モバイル端末や eSIM 、ポケット Wi-Fi といった環境下での制限の有無に関しても、事前に確認し対策を講じておく必要があります。

社内調整と導入スケジュール

VPN の導入は、IT 部門だけで完結するものではありません。各拠点の責任者や総務部門、経営層との連携が不可欠です。スムーズな導入を実現するには、利用開始までに必要な作業を明確に洗い出し、契約、検証、展開といった工程を無理なく進められるスケジュールを設計することが求められます。
また、段階的な展開を行うための PoC (概念実証)や、導入後のトレーニング、運用マニュアルの整備も欠かせません。関係部署と事前に調整し、導入後の混乱を避ける体制づくりを行いましょう。

費用感とサポート体制

VPN サービスの価格やサポート体制はベンダーによって大きく異なります。導入前には、初期費用や月額料金に加え、拠点数や契約形態による費用の変動要素も確認しておきましょう。
また、日本語対応の有無や、現地拠点への訪問サポートの可否も比較すべきポイントです。トラブル発生時の対応時間や復旧時間を定めた SLA (サービス品質保証)の有無、導入後のアップデートや仕様変更時の対応範囲なども含めて、総合的なサポート体制を評価することが、安心して長期運用するための鍵となります。

世界情勢による影響

昨今の米中間の関税や輸出規制に関連した情勢変化により、中国国内では中国製機器を採用する動きも見られます(※ 2025 年 5 月時点)。VPN 導入時にも政治的・経済的な背景によって調達に制限が生じるリスクもあるため、柔軟な対応力を持つベンダーの選定が求められます。

まとめ|VPN に代わる手段として AI を活用したルーティングソリューションもおすすめ

中国における VPN 利用には、通信の不安定さや法的制約といった課題が伴います。こうした課題は、認可を受けた法人向け VPN を適切に選定・構成することで一定の対処が可能ですが、さらに安定性と効率性を重視する企業にとっては、VPN に代わる新たな通信手段を検討することがおすすめです。
その一例が、シングテルが提供する AI を活用したルーティングネットワーク「Singtel Algo-Routing」です。AI によるアルゴリズムを活用して、エッジからクラウドまでのデータ通信経路を最適化するソリューションであり、従来の VPN よりも安定かつ高品質な接続環境を実現します。
Singtel Algo-Routing のネットワークは世界 157 都市、633 か所の拠点に展開されており、リアルタイムでネットワーク状況を分析して最適な通信ルートを選択できるのが特長です。これにより、ユーザーエクスペリエンスや業務効率を高めながら、通信コストの最適化も図ることができます。
VPN の限界を感じている企業にとって、AI を活用したルーティングソリューションは、有力な次の選択肢となり得るでしょう。また、導入の柔軟性や拡張性を求める企業にも適しています。
加えて、アメリカと中国の関係性に起因する貿易や規制の影響により、中国国内では中国製のネットワーク機器を選択する企業もあります(※ 2025 年 5 月時点)。
日本企業が日本と中国の双方に拠点を持つ場合、国内拠点ではアメリカ製機器、中国拠点では中国製機器を使い分ける必要が生じるケースも考えられます。その点、シングテルはアメリカ製・中国製を問わず柔軟に機器調達が可能な体制を持っており、グローバルに展開する企業にとっても安心感のある選択肢です。

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