適応し、そしてビジネスを加速するためのロードマップ

パンデミックの中で力をつけた企業は、リモートワークや自動化の強化といった対策を迅速に取り入れました。来るべき大きな混乱に備えてデジタル社会におけるレジリエンス(デジタル・レジリエンシー)戦略をどのように準備すべきか、この記事でご紹介します。

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digital  resilience

❝パンデミックによる混乱を切り抜けた(むしろ力をつけた)企業は、デジタル・レジリエンシーをビジネスモデルに組み込んだり、迅速に取り入れる方法を学んでいます❞

デジタル・レジリエンシーの必要性を疑う方は、専門家により2019年に作成された2020年に関する予測をお読みください。新年が始まると、多くのアナリストは、米中貿易摩擦や米連邦による利上げ問題よりも、いわゆる武漢で発生した感染症を懸念していたようです。

1年以上たっても、2020年を通してこの混乱から学んだ教訓に、私たちはまだ動揺を覚えています。

混乱はビジネス環境にはつきものとはいえ、昨年のそれは猛烈な勢いで加速していきました。最も先進的な企業は、デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション戦略を洗練させていきました。マッキンゼー社は、企業のデジタル化が、❝約8週間で5年先に進んでいる❞ことを明らかにしています。一方、不運にもビジネスモデルを一から構築し直したり、業界が足元から崩れ落ちるのを見なければならない企業もありました。

この混乱を切り抜け、力をつけた企業は、デジタル・レジリエンシーをビジネスモデルに組み込んだり、迅速に取り入れる方法を学んでいます。

変動するターゲットに狙いを定める

IDCはデジタル・レジリエンシーを❝状況が変化したときに、ビジネスオペレーションを回復させるだけでなく変化した状況を利用できるデジタルケイパビリティを活用し、ビジネスの混乱に迅速に適応できる企業の能力❞と定義しています。

デジタル・レジリエンシーは組織のデジタルトランスフォーメーション戦略の一部であり、経営幹部からの完全な同意を得て全社的に実行されるべきです。最近のIDC調査によると、アジア太平洋地域の幹部の45.6%がデジタル・レジリエンシーを❝ビジネスと技術両面における必須事項❞として認めており、最高幹部レベルの運営が必要なものと考えています。

デジタル・レジリエンシーが現在の企業にとって重要事項になりつつあるとはいえ、企業が首尾よくこなしていくにはまだ幾分複雑なもののようです。

パンデミック前には、COVID-19のような”ブラックスワン”が起きることを把握できた企業は少なく、ほとんどは事後に慌てて対応するしかありませんでした。

今日、ビジネス・レジリエンシーの策定は、リモートワークや自動化の増加などといったパンデミックに特化した対応をサポートしていますが、予測が難しい今後の混乱に必ずしも対処できるわけではありません。デジタル・レジリエンシーの新しいベンチマークは、そのような混乱に適応し、今後どんな状況に変わってもそれを利用できるような戦略を必要としています。

混乱に適応できるロードマップ

頑丈なデジタル・レジリエンシーの構造は3つの異なるフェーズを介して個々の危機に対応します。最初の直接的なレスポンスフェーズ、中間の最適化フェーズ、長期的なイノベーションフェーズです。

対応し、復元する

危機が発生した場合、企業の当座の優先事項には、従業員の安全とビジネスの継続の二つが含まれていなければなりません。

❝在宅ワーク❞と❝ハイブリッド型ワーク❞のワークポリシーの増加はその好例であり、シンガポール国家開発大臣のローレンス・ウォン氏は、早くから「COVID-19と戦うには、人の流動の必要性を抑え、ウイルスが再燃するリスクを最低限にすることが不可欠」と認めていました。5

この段階で、企業は実際の利益をあげる短期的なチャンスに焦点をあわせる必要があります。例えば、タイの病院は、増加したデータトラフィックの需要に応えるため、また5Gベースの遠隔治療といった今後の開発に対応するために、5Gテクノロジーの導入を増やしました。一方で従業員は、スキルの再習得と新たな状況に順応することに焦点を合わせなければなりません。

拡大し、最適化する

最初のフェーズは、企業が混乱の最初のショックを乗り越えるように設計されるもので、第二フェーズは新しい現実に適応できるよう手助けしてくれるものとなります。

危機後の領域というのは、従来の予測アプローチでは未知のものとなる場合が多々あるでしょう。この段階でそのような不確実性を管理するため、スマート・レジリエンシー戦略は、データに基づいた分析主導型のアプローチを多用し、強力なクラウドベースの分析ツールの提供により、組織のすべてのレベルの意思決定者の権限を強めます。

インフォシスコンサルティングの英国責任者であるアンドリュー・ダンカン氏は「COVID-19の中で、最前線に立つ従業員に権限を与えることで、企業がよりフラットで機敏になっていくのを目の当たりにしました」と語っています。「そのようなダイナミックなチームをもつことは大抵、ビジネスオペレーションに回復力を備えさせるための最も効率的で拡張可能な方法です」とも述べています。7

加速し、革新する

企業が第二フェーズで危機後の不確実性を管理できるようになると、今度は第三フェーズを利用して、変化した状況を把握するためにビジネスモデルを再構築できるようになります。

企業は、消費者と従業員の動きにおける恒久的な変化にどのように順応できるのでしょうか?ビジネスと産業モデルにおけるこの不可逆的な混乱の中で、企業が身を置くべき位置はどこなのでしょうか?この様変わりした状況でどのような変化を遂げたらいいのでしょうか?

これらの問いに、適切に取り組んでいくなら、回復力のある企業がこの危機から教訓を得、競争に打ち勝って長期的に力をつけていくことができるのです。

クラウド・テクノロジーを利用してレジリエンスを高める

デジタル・レジリエンシー戦略には、各フェーズやその先の必要に応じて適応し、提供できるようなビジネステクノロジー・プラットフォームが必要です。

少なくともそのようなプラットフォームはサイバー攻撃から保護し、変動するマーケットや顧客、従業員の需要にうまく適応できる機能を備えていなければなりません。

例えば、あなたのレジリエンスインフラストラクチャは、シングテルのサイバーセキュリティサービスが利用しているトラストウェーブ社のクラウドベース・フュージョンプラットフォームによって守ることができます。このプラットフォームはリアルタイムで脅威に対応し、インシデントから素早く回復できるようにします。さらに強力な脅威に対応するには、シングテルのマネージド・セキュリティ・サービスプロバイダー(MSSP)があります。これらの専門家はオンデマンドでのアシスタンスや、業界知識の活用、経験によるベストプラクティスや技術的なノウハウを提供します。

レジリエンス・テクノロジー・プラットフォームの他の面では、継続的なサービスを保証するためにマルチクラウドアプローチを必要とすることがあります。

異なるクラウドサービスをいろんなアプリケーションで利用するなら、企業は堅牢で冗長なネットワークを作り出すことができます。それによりクラウドのある部分が利用できないときでもサービスを継続できます。シングテルのLiquid-Xのようなクラウドベースのネットワーキング・プラットフォームは、マルチクラウドアクセスと分析、セキュリティを統合します。そのようにして、グローバルにクラウド・ワークロードにアクセスし管理できる、柔軟で費用対効果の高い方法を提供することができます。

そのようなクラウドはまた、費用が高くて脆いレガシーインフラストラクチャから企業を解放し、代わりに拡張性があり柔軟なサービスへの接続を可能にします。例えば、シングテルのSD-Connectというサービスがありますが、これは、データセンターと主要なクラウドサービスプロバイダーの間に、ダイレクトでソフトウェア定義のネットワークを作成します。

シンガポールの5Gのように一度新しい開発が主流になると、クラウドインフラストラクチャが、物理的な接続に依存することもなくなることでしょう。5Gの高速で大容量、低遅延のワイヤレスブロードバンド接続により、ネットワーク内であればどこからでもデータ集約型の運用を管理することができます。さらには、新ビジネスの機会を切り開くIoTの展開を拡大することもできるでしょう。

どの要素も、包括的なデジタルレジリエンシーのフレームワーク内で役割を担っており、2020年レベルの混乱に企業を備えるものとなります。

将来の混乱に備える

デジタル・レジリエンシー戦略は簡単ではなく、また簡単であってはならないものです。この戦略には、ビジネスのタイムスケールにおける長期的な計画が必要です。 つまり「使いやすさを維持したままインフラをサイバー侵害から守ること」「現場で起きている現実を変えていくこと」「企業の俊敏性と競争力を改善するために苦労して得た教訓を用いること」が必要なのです。

例え最初の一歩がどんなに小さいものだとしても、結果がどんなに大きなものだとしても、デジタル・レジリエンシーを企業の変革戦略に組み込んでおくなら、次の2020年レベルの混乱が起きたときに、備えができている企業の責任者として活躍することができるでしょう。

とりわけここで述べたソフトウェア定義のネットワークや、IoTについてお困りでしたら、シングテルまでお問合せください。

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