動画ストリーミングサービスを支えるネットワークテクノロジー

何百万人もの視聴者が好きな番組に同時にアクセスできる大容量のトラフィックを、動画配信サイトはどのように処理しているのでしょうか。この記事では、安定した高品質な動画ストリーミングサービスを支えるネットワークテクノロジーをご紹介します。

FacebookTwitterLinkedIn
tech-propels-video-streaming-giants

この100年で、メディアを利用する方法は劇的に進化してきました。その進化の背景にあるのは大いなるテクノロジーの進歩です。

1920年代、無声映画がトーキー映画にとって代わりました。1950年代には、テレビ放送が台頭し、人々はテレビ画面に釘付けになりました。1980年代にはケーブルテレビの登場で視聴者の選択肢は広がりました。2000年代後半になってもなお映画やテレビは人気がありましたが、オンデマンドビデオを提供するストリーミングサービスの台頭によって大変動が起こりました1

現在では、Netflix、Amazon Prime Video、Hulu、Disney+などのストリーミングサービスが人気です。そしてコロナ禍において世界中の人々が家に閉じこもっている間はシリーズ物のドラマをイッキ見する人が増えました。その結果、例えばNetflixは2020年の第1四半期に成長が加速し、約1,600万の新規アカウントの成約を獲得しています。これは、2019年末期の登録数の約2倍にあたります2

このように、ストリーミングサービスをはじめとしてデジタル化の進んだ企業は、テクノロジーを駆使することでコロナ禍の中でも生き残るだけでなく活況になっていると言えます。

しかし、いつでもどこでも番組を全視聴者に提供するために必要な大量データを、企業はどのように処理することができるのでしょうか。それにはSDNのようなテクノロジーが大きな役割を果たしているのです。

Software-Defined Network(SDN)は、Netflix、Amazon、Googleのようなサービスを可能にする重要な技術です3

SDNはNetflixのような企業がコンテンツを保存するために依存している大規模なデータセンターを実現しています。SDNがなければ、企業は規模を拡大したり多種多様な要求を持つ巨大なユーザベースに一斉にサービスを提供したりするなどは難しいでしょう。

しかし、SDNは膨大な量のコンテンツを契約者に配信する企業のためだけではありません。高速で柔軟なネットワークを必要とするあらゆるグローバル企業も、このテクノロジーから大きな利益を得ることができます。

Software-Defined Networking (SDN)とは?

その起源は、スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校の共同研究にさかのぼります4

SDNは本質的に、コントロールプレーンとデータプレーンを分離するネットワークアーキテクチャのアプローチです5

これは、ネットワークトラフィックの送信先を決定するメカニズムと、実際の転送を行うメカニズムを分離するということです。システムは、ふたつのマシンを使用することができます。ひとつ目は、トラフィックの転送に特化した一般的なマシン(ネットワークスイッチに分散させることができるもの)、ふたつ目はネットワーク管理を担当するソフトウェアを実行するより強力なマシン(コントロールプレーンを一元化するもの)です。6

コントロールプレーンの一元管理を可能にすることで、ハードウェアコンポーネントやアプリケーションの大規模ネットワークを1つのネットワークであるかのように監視、構築し自動化することができます。また、ユーザーはネットワークを完全に可視化できます。

SDN、NFV、クラウド: お気に入りの番組をイッキ見できるテクノロジー

ストリーミングサービスは、クラウドコンピューティング、SDN、NFV(ネットワーク機能の仮想化)などのテクノロジーを活用しています。これは新機能を迅速に導入し、数百万人のユーザーに向けて高品質なコンテンツを常時一斉に提供すると共に運用コストの削減も可能にしています。

ネットワーク仮想化(ハードウェアに依存していたネットワークをソフトウェアベースに変換する)によって、ユーザーのデバイスにコンテンツをシームレスに配信できるようになります。コンテンツのプロバイダーはそこで生じた運用コストの削減分を手頃な月額利用料という形でユーザーに還元することができます。

SDNによってグローバル企業の競争力と革新性を高めるには?

世界中の企業がこぞってSDNを採用しているのは、SDNによって競争力と革新性が向上するからです。SDNは新たな収入源をもたらし、設備投資や運営費用を削減することを可能にするのです。7

SDNによって新しいネットワーク機能が使えるようになります。トラフィックエンジニアリング、ネットワーク仮想化、検証とトラブルシューティング、クラウドアプリケーションのためのオーケストレーションと自動化です。企業はより効率的で迅速、柔軟に動けるようになります。

この技術は適応性も高く、企業の有線・無線ネットワーク、データセンター、サービスプロバイダーのネットワーク、携帯電話の無線ネットワークなど、多種多様なタイプのネットワークに利用することができます。8

SDNが最適化できるアプリケーションやサービスには、セキュリティサービス、ネットワークのインテリジェンスとモニタリング、コンプライアンスと規制ずくめのアプリケーション、CAD(コンピュータ支援設計)やエンジニアリングソフトウェアのような高性能なアプリケーション、データセンターやクラウドに分散したアプリケーションの制御などがあります。9

従来のネットワークと比べて、SDNはソフトウェアベースであり、リアルタイムでリソースを管理・設定できるので俊敏性があります。また、コンプライアンスやトラフィックの規制を簡素化でき、セキュリティの一元管理も可能で、仮想マシンも使用できるため安全です。

また、ネットワークを拡張するために新しい機器を購入しなくてよいのでコスト削減ができ、代わりに既存のハードウェアを最適化することができます。ユーザーは、物理的に機器にアクセスしないでネットワーク構成を切り替えることができるため、従来のネットワークよりも制御は簡単です。性能も大幅に向上し、データ量の多いプロセスやアプリケーションにも対応できるようになりました。

このような恩恵と共にイノベーションの道は開かれ、競合他社より優位に立つことができるのです。

SDNによるビジネスレジリエンスの強化

もしコンテンツやサービスを提供しているのであれば、SDNがビジネスにもたらすこれらのメリットをぜひ思い起こしてください。組織はアジャイルで効率的になるだけではなく、SDNによってビジネスモデルを再構築し、新たな収入源としての扉を開くことも考えられます。また、変わりゆく顧客のニーズを満たすのにも役立つことでしょう。

急速に変化する今日のビジネス環境において、SDNによって会社は柔軟性や革新性を増し、デジタルレジリエンスも高まっていくと言えます。

発展著しいアジア太平洋地域の企業に向けて、シングテルのLiquid-Xは企業の柔軟性とレジリエンスを高めるコネクティビティを提供します。Liquid-Xのクラウドサービスによって、企業のネットワークを簡素化し、接続・管理・監視・グローバル展開における煩雑さを緩和することが可能です。詳しくはお問い合わせください。

関連記事

サイバーセキュリティで AI から企業機密を保護するShare
Apr 2025 | -
サイバーセキュリティ
サイバーセキュリティで AI から企業機密を保護する
このブログでは、AI を悪用した不正侵入から企業資産を守るために、Singtel が提供するサイバーセキュリティソリューションをご紹介します。さらに、プライベートな会話を高度に暗号化することで、いかに従業員の機密性を確保するかについても取り上げます。
従来の防御の先へ:サイバーセキュリティの再考Share
Dec 2024 | -
サイバーセキュリティ
従来の防御の先へ:サイバーセキュリティの再考
企業がデジタルトランスフォーメーション (DX) を加速させるにつれ、サイバー攻撃の巧妙さも増しています。このような脅威と戦うために、企業は先進的なサイバーセキュリティのイノベーションを模索する必要があります。ここでは、通信事業者のデータがそれにどのように役立つかをご紹介します。
MSS とサイバー攻撃からの復旧Share
Oct 2024 | -
サイバーセキュリティ, Japanese, Japan
MSS とサイバー攻撃からの復旧
ソフトウェアのエラーにより発生した大規模な IT 障害の結果として、グローバル企業の脆弱性が露呈しています。では、サイバー攻撃により同様なインシデントが発生した場合、企業は何をすべきでしょうか?最初にすべきなのは、問題の存在を認識することです。以下に、マネージドセキュリティサービス (MSS) がどのように役立つかをご紹介します。